ビジネスエリートになるための教養としての投資 〜投資はビジネスの最良の教科書〜

読書日記

「半沢直樹」の新シリーズが大変好評ですね。

私も7年前の前回シリーズで完全にハマり、ドラマ終了後に原作も一気読みした記憶が懐かしいです。

もちろん、今回も毎週欠かさずテレビにかじりついているミーハーな一人です。

第2話で半沢が妻の花と会話しているシーンがちょっと印象的でして、出向先の子会社である証券会社に勤めている半沢に対して、どの株を買ったらよいのかを聞かれたときに半沢は以下のように答えています。

株を買うということはその会社を応援することでもあるんだ。株の値段には、金額だけでは表せない人の思いっていうものが詰まっている。儲かるかどうかではなくて、好きになれるかで選んだほうがいいよ。

TBSドラマ「半沢直樹」第2話 

なぜ印象的だったかというと、この半沢の考えに異を唱えるコメントをしている方がいるからです。

その方というのは、奥野一成さん。

奥野さんは、農林中金バリューインベストメンツ株式会社でCIO(Chief Investment Officer:最高投資責任者)を務めておられる方で、その奥野さんが自身の著書で上記の半沢のセリフと正反対の内容を説いています。

なぜ好きになれるかで投資してはいけないのか?

今回は、奥野一成さんの著書「ビジネスエリートになるための 教養としての投資」をご紹介したいと思います。

どんな人向けの本か

昨今の「老後資金2000万円問題」などでもニュースになっているように、将来に向けたお金をどう確保していけばよいのか、特に現役世代の私たちにとっても他人事ではない問題になっております。

https://kabu.com/kabuyomu/society/16.html

かくいう私も将来の貯蓄は生きていく上で気になっているものの1つで、iDeCoやNISAといった制度を活用して積立投資で資産を形成していくことを考えているところでした。(つまり、まだやってません。)

著書の奥野さんは、このような「老後資金2000万円問題」に多くの人々が絶望的な気持ちになっているのは、ろくに「投資」を学ばず、お金を銀行に預けっぱなしにしてきたことに起因している、と言い切っています。

本書では、投資を知らなすぎる日本人に対して、本来の投資のあり方とその哲学、長期投資のコツ、優良企業の見極め方などをわかりやすく解説しています。

また、この投資の考え方は、大局的にビジネスを把握することに通じるので、ビジネスの最良の教科書であるとも語っています。

さまざまな知識を総動員して結果に結びつけていく作業プロセスは、投資もビジネスも同じだということです。つまり、幅広い知識を身に着けるのと同時に、それを上手に組み合わせて自分なりの仮設を導く事が出来れば、投資でもビジネスでも成功する可能性がグンと高まるのです。

奥野一成「ビジネスエリートになるための教養としての投資」より

本書を通じて、投資そのものの考え方とともに、ビジネスパーソンとして自身の業務を進める上での考え方も学び、個人投資家としてもビジネスパーソンとしても成功に導くことを目指したい人にオススメです。

こんな人にオススメ

  • 正しい投資の考え方を学びたい
  • ビジネスの大局的な考え方を身に着けて、ビジネスに活かしたい
  • 投資の考え方を通じて、人生100年時代の働き方のマインドを知りたい

本書のポイント

本書のポイントは以下になります。

  1. 投資家の思想
  2. 「投資」と「投機」の違い

投資家の思想

まず本書では、働き方の考え方から説明しており、労働者と資本家の働き方に違いがあると説いています。

  • 労働者1.0:自分で特にやりたいという気持ちが希薄なまま、上司からの指示に従って働いている人、つまり労働者としてのマインドセットしか持ち合わせていない人。
  • 資本家:自分で課題を見つけ、変革する力を持っており、物事を構想する力に加えて、産業構造を理解し、広く世界を知ろうとする意欲を常に持っている人。

この2つの働き方から、著者は新たな働き方の考え方、つまり「労働者2.0を目指せ」と提案しています。

  • 労働者2.0:受け身で仕事をするのではなく、自ら主体性を持って課題を発見し、行動する人

主体性を持つことで、もっと広い世界に目が向くようになり、人脈も他の部署や業界全体に広げることができ、主体的に築き上げたスキルや人脈を活かすことで、転職や起業する道も開けるようになる、と説明されています。

さらに、この労働者1.0と労働者2.0のマインドの違いが、資産形成にも違いを生み出す、とも説明しています。

労働者1.0の資産形成は、自らの身体を資本として働き、得た収入を預金へと回して資産を積み上げていきます。

この資産形成では、あくまで自分が働いて得た収入が全てになるので、その収入の総量を超えることは物理的に不可能です。

それに対して、労働者2.0のマインドを持つと、自然と資産形成に投資を組み込む発想が生まれていきます。

広い視野で世の中のビジネスに目を向けることで、自分自身が働く以外にも収入を得る術があることに気づき、資産形成に投資を組み込むことで資本家に一歩近づくことができる、と述べられています。

この労働者2.0のマインドは、いかに自分自身で人生をコントロールして物事を決めていくかが、令和時代でのキャリア形成においてもベースとなるマインドになると私は考えています。

日本の終身雇用制度が終わりを迎えようとしている今において、自分のキャリアを会社任せにしてしまうことはリスクも高く、いざ会社が倒産したときに身動きができない危険性が潜んでいます。

社会のサイクルが昔に比べて早くなっていることからも、一つの会社に固執せず、柔軟にキャリアを選択できるマインドを持つことが、令和時代のビジネスパーソンには求められると考えます。

「投資」と「投機」の違い

また本書では、「投資」と「投機」というのは字はにているが全く異なるものであり、多くの日本人が行っているのは「投機」だと強調しています。

  • 投機:企業の株式がいくらで売れるのかを考えて株式を買う
  • 投資:その企業が将来どれだけの利益を稼ぐかを考えて株式を買う

投機そのものが悪いものである、と主張しているわけではなく、筆者は株式市場を通じて利益を得る方法は人それぞれでよいと考えています。

それは投機家の売り買いによって株価の値動きが生まれ、合理的な価値から大きく上下に乖離するケースが出てくるので、合理的な企業価値を見極めて投資行動を取る投資家にとって大きな収益チャンスに繋がるためです。

この合理的な企業価値を見極めるためには、投資対象とする企業が生み出す付加価値を理解し、参入障壁を把握し、普遍的かつ不可逆的な長期潮流を把握することで、構造的に強靭な構造を持つ企業を探し立ち、その企業の株式を保有し続けることを勧めています。

これだけを読むと、「そんな企業見つけられたら自分もとっくにお金持ちになっているよ」と言う方がいるかもしれません。

しかし私は、強靭な構造を持つ企業を探し出す際に着目するポイントを見極める力は、令和時代のビジネスパーソンに求められている「考える力」を身につけることにも通じることを、筆者は主張しているのだと感じました。

また、投資においてはこの強靭な構造を持つ企業、つまり儲かる仕組みがあり、高い参入障壁を持っているかどうか、という点に尽きることから、「自分の応援したい会社に投資する」という考えはナンセンスである、と筆者は考えています。

半沢のような「好きになれるかどうか」という主観的な考えは、投資する上では不十分と言っており、随分ドライな印象を受けますが、それだけ筆者が投資、さらには会社の利益に対してピュアに見ているかの表れだと感じております。

では具体的に強靭な構造を持つ企業をどのように見つけ出せばよいのか、そのエッセンスについては本書で十二分に語られていますので、ぜひ一読していただけたらと思います。

まとめ

本書では、投資の考え方、また大局的なビジネスの考え方を、投資家の観点から述べられております。

また、投資を行うにあたっての株価指標の味方や、実際の投資事例などにも触れられており、資産形成の方法も学ぶことができる内容となっております。

本書で述べられている投資の考え方を通じて、ビジネスの本質にも触れることができる、一石二鳥の内容となっている本書「ビジネスエリートになるための教養としての投資」の書評は以上になります。

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