昨今の働き方改革や副業制度の登用、さらにはキャリア型採用など、旧態依然とした終身雇用制度は終りを迎え、各人が自身のキャリアを自らが主体的にキャリア形成していくことが以前にも増して求められていると思います。
新型コロナの拡大を契機に、世のビジネスパーソンも転職への関心が高まっており、今後ますます個々人がキャリアについて考えるようになると想定されます。
私自身も30代に入った頃から、今の会社にこのまま働き続けることがよいのか、キャリアについて考えることが多くなりました。
今の会社には満足もしており、給与もそれなりにはもらっており、業務もそれなりに充実している、だけどこのままコンフォートゾーン(快適な場所)に居続けていいのか。
そんなときに出会ったのが、今回ご紹介する「転職の思考法」です。
どんな人向けの本か
冒頭でも述べているように、本書は「転職」対する考え方を、キャリアに対する「思考の軸」を中心に説いた内容となっております。
私のような30代を迎えたビジネスパーソンはもちろんのこと、まだ社会人になったばかりの人も、社会へ飛び出す前の学生のみなさんにとっても、本書を読むことで、自分自身の将来に渡っての「キャリアの軸」を固められるようになります。
また、内容も物語形式で読みやすいので、一つの小説を読みながらキャリアの軸を考えるきっかけにおすすめとなっております。
こんな人におすすめ
- 社会人として一通り経験し、次のステップを考えるタイミングに差し掛かる30代のビジネスパーソン
- 社会人となり、現在の会社を含めキャリアについて漠然としている若手ビジネスパーソン
- 就職活動を始めるにあたり、どのような将来を築いていきたいかを知りたい学生
本書のポイント
本書の主人公は、30歳になったが、特別な専門性もない、大きな組織を率いた経験もない、他社を圧倒するような才能もない、というごく普通の会社員です。
今の会社に居続けるべきか、漠然とした悩みを抱き始めた主人公に対し、コンサルタントが転職の思考法を伝授することで物語が進行していきます。
誰にとっても、最初の転職は、怖い
この一文は本書の冒頭の一節になりますが、人間誰しも経験したことがないことに対しては少なからず恐怖を感じるものです。
ましてやそれが人生の大きな転換点となる転職ともなると、失敗したくない思いが強くなり、どうしても一歩が踏み出せない気持ちになることはしょうがないことです。
ですが、本書でも語られておりますが、一発で「自分に最適な会社」を見つけ出すのは至難の業です。
入社する前にいくら情報を収集し、希望を持って入社したとしても、誰しも少なからず理想と現実のギャップに違和感を感じることでしょう。
配属先が希望の部署と異なったり、希望の部署に配属されても周囲の環境が厳しく苦労することになったりと、入社してから様々な違和感を経験することも多いでしょう。
ほとんどの人は、環境に慣れてくことで徐々に違和感も解消していくことと思います。
一方で、しばらく経ってもこの違和感が解消されなかったり、環境に慣れてきたことにより新たな違和感に気づくこともあるかと思います。
このまま今の会社に残り続けた方がよいのか、それとも別の会社に転職した方がよいのか、多くの方が恐らく30代に差し掛かる前後で一度は考えることでしょう。
このような違和感が解消されない状況になっても、今の環境、つまり今の会社に残り続けることを選択している(もしくは無意識のうちに選んでいる)のがほとんどではないでしょうか。
なぜ転職することに躊躇するのか?
本書ではその理由を「初めての意思決定だから」と説明してます。
大学の選択も、就職先の選択すらも、自分では何も決めていない、世の中からいいと言われる大学を目指し、就職先も、世間的にいい会社を選んできただけ、と本書では主張しています。
多くの人が転職に対して恐怖を感じるのは、人生で初めて、自分の意志で、何かを手放すことになるからだと。
誰もが有限の時間を生きている中で、新しいことに挑戦するためには、同時に何かを捨てることが必要なのかもしれません。
ただし、手放すと言ってもネガティブなことではなく、むしろ人生をより豊かにするための、ポジティブな選択として、時には決断が必要なのだと思います。
20代は専門性、30代は経験、40代は人脈を取れ
転職先を考える上では、自身の市場価値(マーケットバリュー)を認識することがまずは必要です。
この市場価値を測る上で、本書では「経験」の重要性を強く説いており、特に普通の人ほど「経験」で勝負すべき、と説いています。
これを聞くと、普通の人ほど「専門性」を磨いていったほうがよいのではないか、と思う方も多いかと思います。(私もそうでした。)
しかし、「専門性」で勝負するにはセンスが必要で、それは若い頃の環境や、与えられた才能に大きく影響を受けるため、経験のない20代のうちは「専門性」を磨くことがよいのですが、30代から新たな専門性を磨くことは難しいのです。
一方、本書では「経験」はどこを選ぶかというポジショニングの問題だ、そしてポジショニングは思考法で解決できる、と説いています。
また、40代になると今度は「人脈」が重要になります、これは人脈を駆使してビジネスを推進できるかどうかが求められるようになるからです。
実際に私も30代で転職活動を進めて実感しましたが、面談の場では必ずと言ってよいほど過去の経験について質問されます。
特に30代で転職市場に出ていくと、社会人として最も脂が乗っているタイミングと企業側からは見られるため、即戦力であることが強く求められます。
自分がなぜ転職先の企業で活躍できるのかを説明する上で、経験を基に語ることが重要となっております。
ピボット型キャリア
また本書では、転職先となる企業の選び方として、ピボット型キャリアの考え方を説いています。
このピボット型キャリアというのは、自分の強みに軸足を残しながら、もう片足を今後強くなる部分に少しずつずらしていく、という考え方です。
自分の強みとなる専門性や経験を軸とし、今後伸びていく市場へと軸足をピボットすることで、新たな強みを手に入れ、軸となる強みとのかけ合わせで自身をポジショニングしていくことが、自身の市場価値を高める最良の方法である、と説いています。
この考え方は、転職界隈で有名なmotoさんが提唱する「軸ずらし転職」に通じる考え方です、詳しくはmotoさんの著書「転職と副業のかけ算」で語られていますので、本書とともに読んでいただくことをおすすめいたします。
まとめ
以上、今回は「転職の思考法」についてご紹介させていただきました。
本書が出版されたのは2018年ですが、アフターコロナでの働き方を既に予見していたかのような内容で、今読んでも大変参考になります。
今回ご紹介した内容以外にも、伸びているベンチャーの見極め方や、いい転職エージェントの条件、また転職後期に起こる「今の会社に残ってもいいかも」という迷いについてなど、転職活動を進める上での参考になる情報が紹介されています。
著者の北野さんが本書を書いたのは、すべての働く人が「いつでも転職できる」という交渉のカードを持てたとしたら、この国は変わると本気で信じているから、と述べています。
日本は働き方改革により市場流動性が生まれ始めたとはいえ、まだまだ転職に対してネガティブな雰囲気がどことなく漂っているようにも感じます。
しかし、このような現役世代にとって厳しい時代において、会社や国はあなた自身を守ってはくれません。
最後は自分で自分の身を守ることが何よりも大事なことで、この自分で自分を守るためにも、「転職の思考法」を身につけ、いつでも転職できる状態にしておく必要があると考えます。
自分自身で明るい未来を切り開いていくためにも、本書を読んでいただき、自身のキャリアについて考えるきっかけになれば幸いです。
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