仕事を進める上で、斬新なアイデアを出して新たな価値を生み出すような人間に誰しも憧れるものではないでしょうか?
私自身、もちろん憧れています。
「自分のアイデアを形にする立場になってビジネスを生み出す」というのは、一部の成功した人の話ばかりが世の中に出ているので、成功者の考えや行動を真似したくなる気持ちになるのではないかと思います。
一方で、このような斬新なアイデアを生み出す人というのは、ある意味で「変わった人」であることも多く、大多数の人にとってすぐに真似るのは難しいかと思います。
このような話でよく出てくるのは、ブレストに代表されるフレームワークばかり。
ただこれって「アイデアを生み出す人=優秀な人」という方程式が世の中での正義になっているからだと個人的には感じていて、実際のビジネスの現場では突拍子のない発想を出すだけではダメで、いかにして形にするかを追求することのほうが大事だと思っています。
それなのに、アイデアを着実に形にする人へスポットライトが当たらないのは、なんだか釈然としない思いなのは私だけでしょうか?
どんな人向けの本か
今回ご紹介する本では、ビジネスにおいて突飛なアイデアの大風呂敷を広げる経営者やリーダーを「風呂敷広げ人」と定義し、それに対して「風呂敷畳み人」を、そのアイデアを着実に実行する(畳む)リーダーに対する「名参謀」や「右腕」のような存在と定義してます。
この本の著者である設楽悠介さんは、株式会社幻冬舎でコンテンツビジネス局を立ち上げ、出版業界で様々なコンテンツビジネスを立ち上げてきた方です。
著者自身の経験からも、これからの時代に求められるのは、リーダーをサポートしながらときにチームの先導役、ときにプレイヤーとして変幻自在に活躍する「畳み人」ビジネスパーソンである、と主張されており、まさに今までスポットライトが当たることが少ない「畳み人」に焦点を当てております。
この本書の概要をひと目見て、
「これってまさに自分じゃないか!」
と思い、速攻でポチって読んでみたところ、読めば読むほど共感に次ぐ共感の嵐。
私も現場ではリーダーである「広げ人」とともに、リーダーをサポートしながら、様々な役割をマルチにこなす立場で仕事をしており、「畳み人」の醍醐味を身を持って経験してます。
中心人物となって業務を進めるためには、何もリーダーになることがすべてではなく、「畳み人」という立場から推進していく道もあることを、本書を通じて感じることができると思います。
こんな方におすすめ
- ビジネスの世界で求められている「畳み人」について知りたい方
- どんなプロジェクトにおいても必要とされる人材になりたい方
本書のポイント
本書で語られているポイントは、以下になります。
- 「畳み人」がなぜビジネスの現場で求められているのか
- 「畳み人」になるためには
- 「畳み人」から「広げ人」へ
「畳み人」がなぜビジネスの現場で求められているのか
著者の観点では、「畳み人」になることが、実はやりたい仕事ができるようになるための最良のルートだと述べられています。
- ビジネスの現場を引っ張るリーダーである「広げ人」には、必ずといってよいほど「名参謀」や「右腕」が存在する。
- 「畳み人」としてアイデアを実行に移す能力を身につけることで、どの企業でも活躍できる人材になることが可能。
- 「畳み人」として着実に実績を残すことで、より大きなプロジェクトを任されるようになる。
- 優秀な「広げ人」の近くで働くことで、「畳み人」から「広げ人」としての思考、スキルを身につけていくこともでき、「広げ人」の立場で仕事ができるようになる。
ビジネスの現場にいると、様々なバックグラウンドを持った人たちがチームを組んで仕事を進めることが多いのですが、冒頭でも述べたように斬新なアイデアを出した人にばかり注目が集まるため、アイデアマンになることを目指しがちです。
ですがアイデアもただの絵空事を述べるだけでは実際の現場ではダメで、実効性のあるプランに落とし込んで示すことができなければ、チームのメンバーは動いてくれません。
そこで登場するのが「畳み人」。
「畳み人」はリーダーである「広げ人」が描いたアイデアを実行可能なプランに落とし込み、プロジェクトを推進する役割を担っています。
具体的なプランに落とし込むためには、「広げ人」以上に詳細な点も知っている必要があり、またプロジェクトがスムーズに進むようチームのケアからリスクヘッジに至る細部まで一手にコントロールすることが「畳み人」には求められており、非常に重要な役割を担っております。
「畳み人」になるためには
では、「畳み人」になるために必要なことな何でしょうか?
本書では、広げ人のアイデアを「はじめは」一緒に面白がることが非常に重要だと述べられています。
この主張に、私はとても共感しまくりです。
私も優秀な「広げ人」であるリーダーと仕事をしておりますが、このリーダーと仕事を始めた最初の頃は、突然出てくる突拍子もないアイデアにいつも振り回されており、時には反発もしてました。
なぜ反発していたかというと、リーダーのアイデアを実現するためには乗り越えなければならないハードルがいくつもあり、その困難に目がいってしまい素直に受け入れられない自分がいたためです。
また、このハードルを超えるための調整を毎回自分が行っていたため、やりたくもない仕事ばかり押し付けられている、というある種の被害妄想もあったかと思います。
ですが、このリーダーを超えるような素晴らしいアイデアを出せるのかというと、それはそれで難しく、自分なりに考えれば考えるほどリーダーのアイデアがいかに素晴らしいかを思い知らされる日々でした。
ですがあるとき、リーダーが出すアイデアのよい点にふと目が行き、「これを実現するためには何を解決していかなければならないのか?」という目線で仕事を進めてみたところ、これが面白いほどに仕事がスムーズに回ったのです。
そのときに気づいたのですが、「広げ人」が出すアイデアは、簡単には実現できそうにないからこそ、大きな価値を含んでいる可能性が高く、その実現性が低く見えるからこそ、困難を乗り越えたときに大きなチャンスをつかめるのです。
この経験以降、私はリーダーのアイデアのよい点を見つけ出し、共感することから始めるようにしています。
また、このように「広げ人」の一番の共感者としての立場を確立すると、「広げ人」から様々な相談を持ちかけられるようになり、さらに大きなプロジェクトを任せてもらえる可能性が高くなります。
「畳み人」から「広げ人」へ
著者は「畳み人」としていくつものプロジェクトを立ち上げた立場から、その後「広げ人」としての立場も経験しています。
その両方の立ち場を経験してわかったこととして、プロジェクトには「畳み人」が必要だということを挙げています。
現在「広げ人」の立場にいる人も、ある立場では「畳み人」であったり、過去に「畳み人」だった人が多く、そのことからも「広げ人」になる人も「畳み人」のスキルや経験が必要だと述べられています。
本書では、「広げ人」として必要なポイントもいくつか紹介していますが、私が「広げ人」に必要な点として感じたことは、「虚が実を生む」ことに通じるように感じました。
これは田端信太郎さんの著書「ブランド人になれ!」において語られていることで、ハッタリでもよいのでステージを上げ、後から辻褄を合わせていくことで、大きな事業を成し遂げることができる、というものです。
このときに必要なこととして、田端さんは次のように語っています。
要は、「ハッタリ力」があるかどうか。人の言うことを素直に聞いたら褒められるという教育を受けて育った多くの日本人には、これは結構厳しいことかもしれません。
では、どうしたらハッタリをかませるのでしょうか。
大事なのは、そのハッタリをあなた自身が本当に信じられるかどうかだと田端さんは言います。腰が入っていなければ、即座に嘘と見抜かれてしまうもの。
それに「未来はこうなる」と本気で訴えることは、本来誰も否定することはできないはずです。それどころか、その切実さは「何かできそう」という期待をも生みます。
https://note.com/npacademia/n/n1302507a5d3c
「広げ人」は、自由な発想から時として気難しい人と取られることが多いと思います。
しかし、それは「広げ人」自身も実現が難しいことを百も承知で語っていることが多く、その点では孤独な立場なのかもしれません。
だからこそ、「広げ人」が語るハッタリの一番の理解者となり、現実のものに作り上げることが「畳み人」には求められており、その経験やスキルはどのようなビジネスでも必要とされる人材へと繋がっていくものだと信じております。
まとめ
以上、「畳み人」という選択についての書評を書かせていただきました。
ビジネスに携わる人であれば、本書の内容は共感も多く、その考え方はすぐに仕事に活かすことができるのではないかと思います。
また、「畳み人」は業種や業態に限らず必要とされる立場であり、これからの時代における必須スキルの一つではないかと思いますので、本書を手にとってみてはいかがでしょうか。
コメント